陰影礼賛(谷崎潤一郎)の簡単感想

文豪 谷崎潤一郎が日本の文化を語る。

昭和8年頃にこの本が刊行されている。その時点で谷崎は西洋化が進み、なんでも照明で明るくして、日本の文化が壊れると嘆いている。私は若い頃あちこち海外に行ったが、印象として街も部屋もレストランも日本より薄暗く趣があるのは海外だと思われる。便利さの点で日本は独自の明るさを発展させたように思う。

だからといって日本の陰影美がなくなったというわけではなく、また、谷崎の陰翳の美意識が的外れとも思いません。
たとえば、羊羹。黒一色にみえますが、テカテカ光るわけでなし、艶消しの様相でありながらほのかに透明な加減が美しい。虎屋の羊羹は、黒い羊羹の中にところどころ見える小豆が梅ようだということで”夜の梅”というなんとも洒落た名称になっているように感じるわけで、こういうところも陰翳の美意識の一つではなかろうかと思います。
障子を通した光の加減や、仏壇の中の蝋燭。陰影の美しさは日本人の一歩引いた意識、心情と重なるものなのかな、と思います。
現代でも木製の箸や陶器、シンプルな日本料理、白黒の漫画など陰影の文化は続いていると思いますし、陰影の中で想像力が発揮されているのかな、とも思います。

最近はYouTubeで外国人目線で日本を褒める動画を散見します。
自分のことは当たり前として認識しているので、外部から指摘されてその当たり前の興味深さに気づくわけですが、谷崎潤一郎レベルになると客観的にみる能力が高いのでしょう。
言われてみればなるほどな興味深く、おもしろい本でした。



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